我輩は猫妖精である

『基本』の『†初めに』には目を通す事!
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    あの日以来(満月の夜の妖精の花園)※血グロ、シリアス

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      ―ああ、またあの夢だ。―





      空は良く晴れて雲一つない。
      何処までも青。

      空を見上げながら草むらの上へ寝そべる少年。

      「ヨハネー、ご飯よー」

      遠くから少年の名を呼ぶ長い青紫色の髪の女性。
      ヨハネと呼ばれた少年は、「はーい!」と返事をして草むらから体を起こすと女性の元へ向かった。

      女性は母親なのだろう、ヨハネと同じ髪色だ。ヨハネと母親は手を繋いで歩く。



      こうしていつものように毎日を平和に過ごしていた。

      ヨハネは、もう少し刺激的でも良いじゃないか!とケットシーきっての悪戯っ子であった。
      この日も、昼ご飯を食べた後にどんな悪戯をしようか考えていたのだ。

      暫くぶらぶら散歩しながら考えていたが、その日に限ってやたら胸騒ぎがして良い悪戯が思い浮かばない。

      「むぅ…困ったな、これじゃ悪戯できないぞ」

      胸騒ぎが邪魔をして思考を遮る。

      「…こんな時は家で昼寝でもしなきゃ、やってられないよな」

      悪戯を止めて、家でおとなしくしていようとしていたのだが、不意に寒気がヨハネを襲う。

      (…何かに…見られてる…!?)

      視線を探して辺りを見回すが、何も変わった所はない。
      まだ幼いヨハネには、気配を深く探る術を持たなかったのだ。

      この時、その術があれば良かったのか…それは分からない。

      「なん、だ!?てめぇ等何者だ!」

      突如現れた人買いの密猟者達に捕まってしまったからだ。


      密猟者達はヨハネを人質に国を攻める。

      国は混乱の渦に呑まれた。
      逃げ惑うケットシーを乱獲していき、刃向かうケットシーは全て殺戮。

      目の前で繰り広げられる光景に幼い少年がなす術などあるはずもなく、ただただ恐怖を身体に染み込ませるだけだった。

      火を噴き崩れ落ちる家々
      血みどろになって肉塊になった猫妖精
      無理矢理連れていかれる自分よりも幼い子達


      紅、赤、アカ、あか




      そして目の前には


      自身の両親の死骸



      ソレを見ても
      涙は出なかった。
      泣き声も上げなかった。

      急に自分の中から消えた。


      感情が消えていくと同じく、心が警告音を鳴らす。


      ―危険だ、と―




      「ぅ、あああああぁぁああ!!!」




      少年の周りをどす黒い炎が取り巻く。

      抑えつけていた密猟者の一人に、ヨハネは自身の爪を力加減無しに振り下ろした。
      血飛沫を上げて頭から胴まで両断され、崩れる肉塊を感情の無い両眼が見下す。

      ヨハネの声に気付いた他の密猟者も集まり始める。



      ―危険、危険、危険―



      警告音が鳴り響く。
      感情の無い獣人の少年は粗削りの術を使い、粗削りの攻撃を繰り返す。

      しかし、その小さな肉体には負荷が大き過ぎた。
      次第に意識が朦朧とし、身体も重くなってゆく。

      (…ち、くしょう…)

      片膝を着き、肩で息をする。
      意識を手放して倒れるのも時間の問題だろう。

      「……に、げな、さい…」

      朦朧とした意識の淵にいたヨハネの耳に掠れた声が届く。
      ヨハネは動かぬ身体に苛立ちながらも、視線だけそちらに向ける。

      「…にげ、て…生き、なさ…い…」

      絞り出した声は死んだのだと思っていた、愛する母のものだった。
      酷く緩慢な動きで手を伸ばす。
      しかし、力尽きた。手をヨハネの方へ伸ばしたまま死んでしまった。
      今度こそ本当に死んでしまった。
      震える手で母の手を握る。

      「…おかあさん…」

      悲しみに打ちひしがれる間もくれないらしい。
      ある密猟者の容赦無い刃が親子の絆を切り裂いた。

      睨みはすれど、動かない身体ではどうしようもない。
      追い討ちをかける打撃に耐えるだけで、反撃はしない。できない。

      もう身体はこれでもかというように酷く傷付き、意識も僅かで。

      「さっきはやってくれたなァ!」

      密猟者は愉快そうに醜い笑みを浮かべ、止めの一撃にと刃を高く振り上げる。
      大振りで隙だらけなその一撃。

      ヨハネは一瞬の隙をつき、力いっぱい地面を蹴って距離をとる。
      躱したものの、着地時に体制を崩した。しかし、バランスをとる事なく半ば転がるようにそのまま 赤い 国を後にした。





      やみくもに
      走って、走って、走って…
      見知らぬ場所をもひたすらに。足を止めたら死ぬのだと自分に言い聞かせて。

      「はっ、…はっ、…、っあ、う…!」

      心は走る。だが身体はついていかない。
      限界を向かえて、倒れ込む。

      まだ逃げようと顔を上げると、幸運にも小さな洞穴を見付けた。

      這いずり、自身が入るのがやっとの広さの洞穴の中へと入ると、とうとう気を失ってしまった。
      ヨハネの傷口から流れ出た血は、天の情けだろうか、いつの間にか曇っていた空が涙を流して消してくれた。
      お蔭で見つかる事はなかった。











      ―あの日以来、何かを失うのが怖くて堪らない―




      こんな夢のような現実を思い出して、不安に駆られた俺は隠れ家の外へと足を運んでいた。

      (満月の夜の見せた戒めなのだろうか)

      綺麗な夜空を見上げて思う。

      俺は…。

      本が綴った裏話―inside story― | permalink | comments(0) | trackbacks(0) | - |

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