我輩は猫妖精である

『基本』の『†初めに』には目を通す事!
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    午後のサンクポート、塩湖にて―Another―

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      日記の続きの物語。

      ーーーーーー
      (その日の夜。ロビー的な場所で治療してもらった後の話)

      ううん…怪我を治すのに不純物を取り除くって事で、毛を剃ったけど…変な感じー。

      (ユングとマクナーリアに治療してもらった右腕。傷跡は残っているが、ゆっくりならば動かせるくらいにまで回復した。魔法様様である。 右手と左手を見比べながら、自室へと向かう。傍らには、怪我を心配して付きっきりの黒猫が居る)

      『ナー/普通の人間みたいな腕じゃないか。気に入らないのは…手は剃ってないからか?』

      (片腕だけ手袋をしているような見た目。猫少年はこくこく頷いた。フッ、と笑う黒猫)

      『ナーォ/心配しなくても大丈夫だ。お前怪我治るの早いだろ?そんな感じで毛も生え揃うさ』

      …そうだといいな。このままじゃ、ちょっと…いや、結構おかしな格好だもん。

      (扉を開ける猫少年。普段とは逆の手だが、両利きなので問題ない。先に黒猫を入れてから自分も入り、ベッドに腰掛け、枕元のリュックから自作の塗り薬と包帯を取り出す)

      …うう、染みる〜…。

      『ナォ/我慢しろ。怪我したのはお前なんだから』

      へいへい、分かってらー。

      (自作の薬を塗り終えれば、包帯を巻く。普段から怪我が絶えない故に、その動作は慣れたもの。一連の作業を終えたあとは、自然治癒能力の高い自分の体質に任せる。 明日の朝には、日常動作は難なくできるくらいにまで回復するだろうと、気持ちを前向きに持ちつつ、就寝)

      ーー
      (翌朝。自室)

      (怪我の具合を見るべく、包帯を外したのだが、猫少年は右腕を眺めて固まった。わなわなと震えてさえいる)

      ……怪我は…跡すら残ってないし、毛も生えた。………だけど…。

      『ナー/…治って良かった。まずはそう思え』

      (傷は跡が残らず綺麗に治っていた。腕の毛も綺麗に生え揃っていた。問題は、生えてきた毛が元々の毛色。つまり、猫妖精の誇りである青い毛色だったという事だ。理由は分からない。魔法の作用か、薬の刺激か、怪我の度合いだったのか…。思いつく限りの理由を探そうとして、分からず、困惑と動揺の色を滲ませる猫少年に、黒猫は言葉を投げる。数える程だが、黒猫も猫少年の青い毛色を見たことがある。理由も知っている。ぶっきらぼうだが、宥めようとしてくれているのに、猫少年も気付いた。深く、深く、深呼吸をして)

      …ん。そう、だね。ゴメン。ちょっと、落ち着く事に、する…。
      …久々になったから、ビックリ、しただけ。………こっちが本当なんだから、驚く方が、おかしいんだけど。

      (そっと青い毛並みを撫でる。表情は懐かしさの色を含んだ無表情。ふーっと長い長い息を吐いた後、右腕に新しい包帯を巻きつける。丁寧に、丁寧に。毛が飛び出さないように)

      『ナォ/ヨハネはヨハネだろ。毛色もすぐに白くなるんだ。あまり難しく考えなくていい』

      (ニンマリ、笑う黒猫。やんわりはにかむ猫少年。毛色が変色するまで長くても2日。早い時は半日もなかった。バレなければいいのだ。そう思うことにして、皆の集まるロビーへと足を運んだ)

      今日の朝ごはん何ー?
      あ、怪我ね、随分良くなったよ!ありがとね♪ 心配かけてごめんね!
       
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      日中の森、街道、馬車内、にて―Another―

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        (猫少年が、病院へ運ばれた直後の話)



        静かな病院に慌ただしい足音が響き渡った。
        水色のメッシュが入った黒髪の女(名をハルカという)は、受付を見るなり飛び掛かるような勢いで質問を並べた。

        「すんません!!うち、ヨハネの保護者なんやけど、何処におるんか分かります!?白猫の男の子なんやけど!」

        興奮して息を荒らげるハルカを、受付の女が宥める。今、調べますから、と。
        しかし、その日は重体者が多く入っており、調べるには時間が掛かった。一分一秒すら惜しむ様子のハルカ。病院内という事もあり、流石に怒鳴り散らしたりはしていないが、威圧的である。
        ようよう、ヨハネという名の白猫の少年が重傷で運ばれてきた事が分かった。受付の女は、直ぐさまハルカへと伝えた。直に手術が始まるとも。

        「…ほ、ほんまなん…?・・・そない酷いんか…!」

        ハルカの顔は青ざめていく。心配の色が濃くなる。
        数日前にも病院に運ばれたと聞いたばかりだ。その時は、一泊しただけで帰ってきた程の軽いものだったようだが。
        手術室を教えてもらうと、走って向かう。

        「おおきに!騒がしくしてもて、堪忍な!」

        院内ではやや駆け足くらいにしておくものだが、到底できそうもなかった。
        再び静かな病院に足音が響く。


        息を弾ませて、手術室の近くまで来た。黒猫の姿が見えた。猫少年がいつも連れている黒猫のハディだった。
        黒猫が見えてから程無くして、看護婦がベッドを押してきた。それには、すっかり血の気が無くなっている猫少年が力なく横たわっていた。
        ハッと息を呑む。
        ハルカは歩幅を広げ、足早にベッドへと向かう。

        「…ヨハネ、生きてる…やんな…?」

        これ以上は、と、別の看護婦に制止されはしたが、近付けば外傷の状態が自ずと目に入る。酷いものだった。
        思わず手で口を押さえた。涙が溢れた。
        ヨハネを乗せたベッドが、手術室へと入って行く。扉が閉まりきるまで、見送った。無事に手術が終る事を信じて。
        今にも崩れそうなハルカに、看護婦から近くのソファーに座るよう勧められる。

        「・・・おおきに…」

        消え入りそうな声で礼を言い、ドサリとソファーに座る。黒猫はいつの間にかハルカの足元へと。心配そうに手術室を見つめている。

        「ハディも、心配して来てたんやね…」

        やんわりと黒猫の頭を撫でてやり、ハルカもじっと手術室の扉を見守る。

        猫少年はよく大怪我をしては病院送りになっている。
        その度に心配し、こうやって手術室の前で黒猫と待つのだ。待ってさえいれば、猫少年は元気になって帰ってくる。
        信じて、待つ。



        何度経験しても生きるか死ぬかの境目にいる家族を待つのは慣れない。
        長い長い沈黙。時計と扉に視線をやる。まだ、反応はない。
        刻々と時は進み…。沈黙を破って手術を終えたらしい医師と看護婦が出てきた。
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        あの日以来(満月の夜の妖精の花園)※血グロ、シリアス

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          ―ああ、またあの夢だ。―





          空は良く晴れて雲一つない。
          何処までも青。

          空を見上げながら草むらの上へ寝そべる少年。

          「ヨハネー、ご飯よー」

          遠くから少年の名を呼ぶ長い青紫色の髪の女性。
          ヨハネと呼ばれた少年は、「はーい!」と返事をして草むらから体を起こすと女性の元へ向かった。

          女性は母親なのだろう、ヨハネと同じ髪色だ。ヨハネと母親は手を繋いで歩く。



          こうしていつものように毎日を平和に過ごしていた。

          ヨハネは、もう少し刺激的でも良いじゃないか!とケットシーきっての悪戯っ子であった。
          この日も、昼ご飯を食べた後にどんな悪戯をしようか考えていたのだ。

          暫くぶらぶら散歩しながら考えていたが、その日に限ってやたら胸騒ぎがして良い悪戯が思い浮かばない。

          「むぅ…困ったな、これじゃ悪戯できないぞ」

          胸騒ぎが邪魔をして思考を遮る。

          「…こんな時は家で昼寝でもしなきゃ、やってられないよな」

          悪戯を止めて、家でおとなしくしていようとしていたのだが、不意に寒気がヨハネを襲う。

          (…何かに…見られてる…!?)

          視線を探して辺りを見回すが、何も変わった所はない。
          まだ幼いヨハネには、気配を深く探る術を持たなかったのだ。

          この時、その術があれば良かったのか…それは分からない。

          「なん、だ!?てめぇ等何者だ!」

          突如現れた人買いの密猟者達に捕まってしまったからだ。


          密猟者達はヨハネを人質に国を攻める。

          国は混乱の渦に呑まれた。
          逃げ惑うケットシーを乱獲していき、刃向かうケットシーは全て殺戮。

          目の前で繰り広げられる光景に幼い少年がなす術などあるはずもなく、ただただ恐怖を身体に染み込ませるだけだった。

          火を噴き崩れ落ちる家々
          血みどろになって肉塊になった猫妖精
          無理矢理連れていかれる自分よりも幼い子達


          紅、赤、アカ、あか




          そして目の前には


          自身の両親の死骸



          ソレを見ても
          涙は出なかった。
          泣き声も上げなかった。

          急に自分の中から消えた。


          感情が消えていくと同じく、心が警告音を鳴らす。


          ―危険だ、と―




          「ぅ、あああああぁぁああ!!!」




          少年の周りをどす黒い炎が取り巻く。

          抑えつけていた密猟者の一人に、ヨハネは自身の爪を力加減無しに振り下ろした。
          血飛沫を上げて頭から胴まで両断され、崩れる肉塊を感情の無い両眼が見下す。

          ヨハネの声に気付いた他の密猟者も集まり始める。



          ―危険、危険、危険―



          警告音が鳴り響く。
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          それは得てして得難い

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            俺が、深夜のあの場所で待っていた『アイツ』。『爽やかな放浪者』…今は爽やかじゃないけれど。
            ソイツが持ってた、『青色の本』を手に入れた。
            これが『探し物』かもしれない、と思ったまでは良い。

            問題は、その後だ。




            「嫌にあっさりついて来たな?」

            男は笑う。

            手は掴んで離しはしない。
            痛いくらいだ。

            「…『中身』、見たんじゃないですの?」

            ただただ手を引かれて歩く猫少年(今はメイドの格好をしているが)は、男に冷ややかな視線を叩き付ける。

            男は笑う。

            『探し物』が違っていても、自分を嗅ぎ回っていたのだから殊更怪しいものだと猫少年は思った。
            真意を確かめなくてはならない、猫少年はそう思ってついて来たのだ。
            沢山の『約束』が脳裏に浮かんでは消えていく。『約束』は守らなくては。

            「さあな。貴様に用があったのは確かだが?」

            くつり、男は笑う。

            「いつまでその口調なんだ?」とも言ったか。
            ともかく常に笑みを浮かべている男。
            お世辞にも爽やかな笑顔とは言えないが。

            「……」

            雨に濡れないように仕舞った『本』を、今は開く気にはなれなかった。
            あれだけ欲しがっていた物なのか、それとも違う偽物なのか…。
            どちらにしろ、猫少年が成す事は『中身を見た者』の『記憶を飛ばす事』。
            とある自警団員の友達との『約束』である、『記憶を飛ばす事』を優先しなければならない事を猫少年は知っている。

            二人は歩く。

            全身に雨水を浴びせながら。

            何処に向かっているのかは分からないが、とにかく向かっているのだ。
            猫少年はこのまま押し黙っていては切りがない、と思って口を開けた。

            「…何故捜していたのか、言えますの?」

            男は笑った。
            然も愉快そうに笑った。

            「金だ」

            「わざわざ大金の成る木を見過ごす事などあるまい?」

            男は笑う。

            「…てめぇ…!」

            猫少年は怒りを顕にした。

            石炭が燃え上がるような気持ちがして、目も口も大きく開いて、毛を立たせた。
            獣の声で唸る。

            どういうわけかは知らないが、自分を金の成る木だと言った男。
            この状況でこう答えるのだから、間違いなく『知っている』に違いない。
            だけれど猫少年にはまだ知らなければいけない事があった。
            すっかり聞き終わるまでは食い下がるつもりなのだろう、睨んだり唸ったりはするが抵抗して逃げ出したりはしなかった。
            殺す事もしなかった。

            ただただ手を引かれるままに歩くのである。
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            光と闇

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              「にゃふー…。今日も疲れたぁ」

              湯舟に浸かり長いため息をつく猫少年。
              黒猫は専用の湯舟で気持ち良さそうに目を閉じている。

              猫少年は今し方仕事から帰って来たばかりで、お疲れモード。

              「裏の仕事はスリムあって楽しいけど、あまり安心できるもんじゃないよね…」

              ついつい愚痴がこぼれ落ちたりもする。

              『自分で選んでおいて、それはないだろう』

              「う…、それは…そうなんだけど…」

              正論を突いてくる黒猫に、猫少年はぐうの音も出ない。
              垂れてくる長い髪を欝陶しそうに掻き上げて、またため息をついた。

              「でもさ…裏(こっち)側しか得られない事もあるんだよ。…だから……真っ当には、…」

              沈黙。
              暫く間を置いて、黒猫は言う。

              『…それもお前次第だろう?』

              待っててくれている奴もいるんだ、忘れるな。と、短い黒猫の言葉。
              猫少年はゆっくり目を伏せる。
              分かっている。と。

              『…温くなってきた。変えてくれ』

              「…はいはい、今変えるよ」

              クスッと笑い、黒猫の湯舟を新しい湯に変えてやる猫少年。
              黒猫はまた専用の湯舟に滑り込む。

              不器用な黒猫(彼)なりの、気遣い。

              「ねぇ、表(あっち)側でも仕事をしてる理由話した事あったよね」

              『ああ、一度だけ聞いたな』

              「それなんだけど…昔とは少し考え方が変わったんだ」

              そこまで言い、一度口を閉じた。
              黒猫は続きが気になるとばかりに猫少年を見上げる。
              黒猫と目が合えば意地悪く笑い、再び口を開いた。


              「昔は、ただ右も左も、表も裏も知らなくて情報に飢えてた。だからがむしゃらに働いてたわけ。情報を得る為にはお金がかかるし。
              だけど、今は綺麗なお金を残しておきたいなって思うようになったんだ」


              (だって、友達と買い物とかしたいからね。
              汚れたお金じゃ、悪いでしょ?)

              全部言わなくても黒猫には十分伝わっていた。
              フッ、と口の端を上げて笑ったのはそのためだ。

              『それなら…、……いや、野暮か…』

              「…『何故裏にも手を染めるのか』、でしょ?」

              黒猫は一瞬目を大きくしたが、次第になんともいえないといった表情へと変わっていった。

              それだけ長くいるという事なのだろう。
              二人はクスリと笑いあう。

              『ああ、そうだ。理由を聞いても構わないか?』

              「…うん、良いよ」

              猫少年はにんまり笑うと、頷いた。
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              何故(深夜の広場、前日談)

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                通路は思っていたよりも複雑だ。
                まるで巨大な迷路のようになっている。

                「せっかく隙をついて逃げたのに…」

                このままでは捕まるのも時間の問題だ、とぼやきながらも前へと進む。
                何処から奇襲を仕掛けられるか分かったものではないと、自然に速度を速めている事に気付いた。

                (…何ビビってんだ、俺。しっかりしろっての…)

                自身に檄を飛ばす。

                しかし、思いとは裏腹に足が進まない。
                ダメージがじわり、じわりと少年を追い詰める。





                「……全くワケわからん…」

                歩けど歩けど、出口に辿り着かない。
                もはや出口に向かって歩いているのかさえ分からない。

                「…」

                降参するフリをしてどうにか脱出出来ないものか…。
                頭を捻るが、手強い敵が多過ぎる。賢い方法とはいえない。

                兎に角、とりあえずは休憩。
                ふらふらと柱へ体を預ける事にして、後は回復次第に通路を壊して回ろうと一息ついた。

                ただ座り込んだだけなのに、急に物凄い睡魔に襲われる。
                歩き回りはしたが、自分はそれほど疲れきっているともいえない。

                となると、答えは一つ。

                「…罠、か…」

                とろんとした目の揺らぐ視界の隅に、男がちら、と映る。
                「あぁ、やっぱり罠か」なんて悠長に考えたのを最後に、少年は崩れ落ちるように地面へと横たわった。

                「……捕まえた。俺の勝ちだ…」

                ゆっくり歩み寄り、少年に触れて呟く。
                にやあ…と口元を歪ませ、少年を担ぎ上げて広い屋敷内へ向かう。

                男は眠りの魔術を使って少年を捕まえた。
                卑怯な手段を使ってまでも捕まえたかったのだ。

                「なかなか珍しい毛色の獣人だ。さぞ良い値で売れるだろうな」

                低い笑い声を漏らしながら、男は少年を手下に用意させた檻へとぶち込んだ。
                背中に走る衝撃で目を覚ました少年は、鎖で繋がれて身動きが取れない事に気付く。

                「な、何だコレ?!」

                噛み付いても、爪を立てても壊れない。獣人用の鎖らしい。

                「…負けたお前は俺の言う事を聞く。追加ルールだ」

                苦々しい表情をする少年に、男は言った。

                「は?追加ルールって…、俺聞いてねぇ!」

                唖然とする少年に、男は楽しそうに答える。「今さっき追加した」と、意地の悪い笑顔を浮かべた。

                「そうそう、お前は闇オークションにかける事にした。珍しい毛色と目の色だしな」

                さら…と少年の髪を弄び、くっくっと笑う。
                少年は怒りの色を表にして、歯を食いしばる。

                「ゲスが…!」
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                何故(深夜の広場、前日談)

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                  ―俺が、一体何をした?―


                  突如呼び出した相手を睨みつける。
                  薄暗い部屋故に表情は分からないが。




                  (仕事は言われた事をした、結果も良好。…何かあるか?)

                  そんな事を考えながら、今回仕事を依頼してきた相手の部屋に入った。後ろ手でそうっと扉を閉める。

                  「まだ何か用事でも?」

                  少年は素っ気なく言い放つ。

                  それもそうだろう、今日はもう報酬も貰い終わり、後は帰るだけだったのだ。
                  なのに至急部屋に来るように呼ばれたのだ。
                  また報酬金額の引き下げだろうか、なんて思いつつも依頼してきた男を見る。

                  「仕事が終った所ですまないな、次の仕事ができたからそれもしてくれないか?」

                  薄暗い部屋を照らす頼りない蝋燭。
                  男の言葉が部屋へと染み込んで消えていく。

                  (なんだ、そんな事か)

                  軽く肩をすくめて、答える。

                  「値段は倍以上だ。それでも良いなら、話しだけでも聞こうか?」

                  あくまでも聞くだけ。
                  やるかどうかは自身で決めるのだ。

                  「…金なら好きなだけやろう。ただし、聞くなら断る事は出来ないぞ」

                  ぼそりと呟いた男に、一瞬目を大きく見開く。
                  そこまで言うからには、かなりリスクの高い仕事になるであろう事は今までの経験上で分かっている。

                  「…内容は?」

                  少しだけ興味が沸いた。
                  最近の仕事はやり甲斐が無いのだ、少しくらいリスクを負っても良いかもしれない、と。
                  しかし、尋ねた途端に少年は言いようの無い危機感を感じた。獣のカンが察知したのだ。

                  男がうっすらといやらしく口角を上げるのを見た時、少年は確信した。

                  ―聞かぬまま断れば良かった―

                  嫌な汗がじっとりと肌を湿らす。何か自身の手に負えないような事になりそうだと身体が危険を知らせるも、少年の好奇心がそれを上回る。

                  「…どうした?早く話せよ。それとも、俺に全財産持ってかれるのが怖いか?」

                  にやり、と挑発的な笑みを浮かべて男を煽る。

                  それを聞いた男はゆっくりと椅子から立ち上がり、ゆらり、ゆらり、と歩いて少年へと近寄る。
                  不気味、としか言いようがない。

                  身構える少年の肩に軽く手を乗せ、耳元で囁く。

                  「屋敷内で鬼ごっこしよう」

                  男の熱っぽい息が耳に掛かり、不愉快窮まりない顔で睨みつける。

                  「馬鹿か、てめぇは。鬼ごっこなんざ…っ?!」

                  ハンッと鼻で笑い悪態をついた少年の言葉を遮るように、男が少年の口を手で塞ぐ。

                  「ルールを説明してやるから黙って聞け」
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